こんにちは。六法法律事務所の弁護士道本幸伸です。
私の得意分野は、相続、遺言、遺産分割等の相続全般です。新宿オフィスにて、ご相談を承っております。
【長男の恫喝や暴力に怯える日々が続くA美さん】
75歳になるA美さんは、数年前に夫を亡くし一人暮らしをしている。
子どもは長男と次男の2人。次男の方は性格が穏やかで優しく病院の付き添い等も積極的に行なってくれるが、長男は素行が非常に悪く、夫の死後ますます横暴になっている。
A美さんは自身の遺産について悩んでいる。
というのも、できれば面倒をよく見てくれている次男の方に多くあげたいと考えているからだ。
しかし、その考えを知った長男は激怒し、毎日A美さんを恫喝するようになった。
酷い時は顔を平手打ちすることもあり、A美さんの心身は疲弊する一方になってしまった。
【専門の弁護士に相談する】
次男に遺産を多くあげたいA美さんが取る手段はどのようなものが良いでしょう。
まず前提として、日常的に恫喝や暴力を行なう方に対して、話し合いで解決をしようとしても、横暴なやり方で丸め込まれてしまうかと思います。(遺産相続は高額のお金が動くので、相手も感情的になります。)
まずは、弁護士に相談をしてアドバイスをもらった方が良いでしょう。
第三者の専門家を間に入れることで精神的な負担も軽くなります。
【遺留分を考慮する】
上記のケースでは、長男と次男の遺産にどれだけ差をつけさせるかによって対応が変わってきます。
民法では、遺産相続における最低限の割合が保障されており、これを「遺留分」と言います。
今回のケースでは相続開始後の法定相続人は長男と次男の2人なので遺留分は遺産総額の1/2×1/2=1/4となります。
この遺留分は遺言書の効力でも侵害することはできません。
しかし、逆に遺留分さえ侵害しなければ、遺産の割合は遺言書で自由に決めることが可能です。
【遺産を一銭も与えたくない場合】
『財産を全く与えたくない!』場合は「相続廃除」という方法があります。
これは被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、著しい非行を行なっていた場合に、相続の権利を剥奪される制度です。
相続廃除が成立すると遺留分すらも認められなくなり、遺産は一銭ももらえないようになります。
【相続廃除の方法】
相続廃除は被相続人が家庭裁判所に申請を行う方法と遺言書に記して意思表示をする方法があります。
(1)被相続人が家庭裁判所に申請
遺産相続することが想定される相続人(推定相続人)から暴力や侮辱行為を受けている場合、被相続人が「推定相続人の相続廃除」を家庭裁判所に申請することができます。
裁判所の審議後、市区町村役場に「推定相続人廃除届」を提出することで適用となります。
(2)遺言書での意思表示
遺言書に特定の相続人の廃除を記載しておく方法です。相続開始時に遺言執行者が廃除の申請を実行します。よって、遺言書の中で遺言執行者の指定をする必要があります。
【廃除の可能性があるケース】
相続廃除が適用されるのは以下のようなケースです。
(1)被相続人への虐待
日常的に暴力や恫喝を行なっている場合です。要介護状態の親に対して食事を与えない、適切な介護をしない等も当たります。
(2)被相続人に対する重大な侮辱行為
日常的に被相続人に侮辱する言葉を浴びせる、悪口を言いふらす、被相続人の秘密を暴露して名誉を傷つける等が該当します。
(3)その他著しい非行
重大犯罪を犯して刑務所に収監される、高額の借金を作って被相続人に肩代わりさせるといった場合にも相続廃除が認められる可能性があります。
相続廃除は、単なる喧嘩では成立しません。 例えば、子どもが親に対して、「死ね」とか「いつまで生きているんだ」などと発言した原因が、親子喧嘩で一時的なものだった場合には重大な侮辱とは言えないからです。
また、普段から親の介護に熱心な子どもが、介護疲れのイライラから何かの拍子に、たまたま侮辱的な事を言ったからといって、相続廃除は成立しません。
【相続廃除は裁判所の判断次第】
相続廃除は特定要件に当てはまれば自動成立するものではなく、家庭裁判所の判断に委ねられます。裁判所自体、相続廃除についてはかなり慎重に審議します。
審議は被相続人と推定相続人の対立の原因や被相続人の落ち度の有無、日頃の推定相続人の行動等、様々な要素からケースごとに判断されますが、廃除の対象となった相続人が異議を申し立てることによって状況が変わることもあります。
いずれにせよ、相続廃除は成立が難しいものですので、一度相続専門の弁護士に相談した方が良いでしょう。
相続に関して、お悩み等ございましたら、相続専門の六法法律事務所までお気軽にご連絡ください。
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